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17 Aug 2010 - Interview with Hideyuki Fukasawa (August 2010)
SEMO:
深澤秀行さん、今日はお話を頂けて感謝しています。 先ず最初に、SEMO読者の為に自己紹介と、音楽バックグラウンド、影響を受けたジャンル/アーティスト、自身がこれまでに受けた音楽教育について聞かせて下さい。
深澤秀行:
はじめまして。よろしくお願いします。
7〜8歳の頃に祖母が「あなたがピアノを習わないならこのピアノを捨てる」と聞かされて、断れずに習い始めました。音楽に触れるきっかけだったので今では祖母に大変感謝しています。しかし練習しなかったのでとても悪い生徒でした。
10歳の時、アニメーション「白鳥の湖」というのが日本で公開されまして、僕は本編を当時見てないんですが、何故かそのサウンドトラック・テープを手に入れてよく聞いていました。ですからチャイコフスキーも僕の先生のひとりかもしれません。
12〜13歳のときにVAN HALENやOZZY OSBOURNEを聴いて衝撃を受け、何故かKORG製シンセサイザーPOLY800を手に入れます。とにかく何でもコピーして弾いてました。音色を似せて作ることも始めてましたし、同時にとても稚拙ですがオリジナルな作品も作ってました。
その後、バンドを組んでドラムをやったりもしましたが解散し、ひとりになったときに「やっぱり音楽が作りたいな」と昔ひとりで作っていたことを思い出して楽器屋さんに行ったらシンセサイザーはPCMの時代が来ていたし、シーケンサーも大容量だし、エフェクターやレコーダーも安くなっていた。一通り手に入れて朝までひとりでセッションしてたよ。
SEMO:
深澤さんは一人の作曲家として有名になる以前、岩代太郎さんと共にアニメやゲームの作品でお仕事をされていました。 どのようにしてお二人のコラボレーションは始まったのでしょうか。 そして岩代さんとのコラボはどういった感じなんでしょうか。
深澤秀行:
岩代太郎とはもう15年にもなる親交がありますが、いまだに毎回のセッションが楽しみです。はじめて仕事をご一緒したのは1995年の大林宣彦監督の「あした」という映画の音楽です。たった2時間ほどのセッションで、僕が覚えているのはAKAIのサンプラーからコントラバスのライブラリーをいくつかチョイスした事しか覚えてません。
このように僕は作曲家としてキャリアを始める前に、シンセサイザー・プログラマー/サウンド・デザイナーとしてキャリアをスタートしていました。ですのでいろいろなアーティスト、作編曲家の方々と仕事をさせていただきました。
SEMO:
岩代さんとのコラボを通して「レッドクリフ」「日本沈没」等とアニメや映画のメジャータイトルに関わられてきました。 これらの作品の楽曲で、シンセサイザープログラマーとしての仕事はどうだったか教えて下さい。 深澤さんのクリエイティブさはどう影響を与えたと思いますか?
深澤秀行:
レッドクリフはまさにビック・プロジェクトで、スタジオでも日本語、英語、中国語が飛び交っていました。たくさん音色を用意するための十分な時間はありませんでした。しかし膨大なライブラリーを太郎氏と吟味し、プリプロダクションを通して10〜16のオリジナル音色をストックすることができて、それらを組み合わせて全体の雰囲気に共通する空気や雰囲気を演出することが出来ました。
僕のクリエイティブさは太郎氏にどう評価されているのか分からないけどね!
でも僕がそうである以上に彼はせっかちなので、お互いの仕事のペースは理解し合っていると思います。
SEMO:
より最近の話になりますが、アニメ「幕末機関説 いろはにほへと」と「逮捕しちゃうぞ フルスロットル」の音楽を作曲されました。 プロダクションの中で、プログラミングではなく作曲を手掛けるのはどうでしたか? 両作品の音楽の作曲ではどういったアプローチを取ったんでしょうか。
深澤秀行:
アニメ「幕末機関説 いろはにほへと」は何故か自然と作曲することが出来ました。このアニメ作品自体はオリジナルであるにもかかわらず、僕は以前から知っていたかのように自然に取り組むことができました。しかし「逮捕しちゃうぞ フルスロットル」の音楽と違うのはいくつかの和楽器をフィーチャーしたかったので和楽器の勉強を真剣にしました。文献の情報よりも、楽器の持ち主や楽器自体の個体差で随分と違うことも知りました。
「逮捕しちゃうぞ フルスロットル」ではキャラクターごとに、或いはシーンに沿って音楽を書き下ろす作業でしたが、「幕末機関説 いろはにほへと」ではもう少し複雑な事を試みていました。それぞれのモチーフが重なりあうことを想定していたり、実際にそういう編曲もありました。
SEMO:
深澤さんは他にも川村結花さんのアルバムやグランツーリズモ2のリミックスアルバム等、多くのCD制作に関わられています。 今まで関わられたアルバムの中で、自身にとって何か特別な作品はありますか?
深澤秀行:
作曲家の本格的なスタートになるゲーム「カオスレギオン」のアルバムは特別なものになりました。
SEMO:
深澤さんが最初にしたカプコンのお仕事は、岩代太郎さんの指揮の元に手掛けられた「鬼武者2」でした。 同タイトルの楽曲のシンセサイザーオペレーターとしての経験を聞かせて下さい。 どのようにこのタイトルがキッカケとなり、ゲーム「カオス レギオン」の作曲を手掛ける事になったのでしょうか。
深澤秀行:
よく調べ上げてますね!その通り「鬼武者2」でのセッション参加がきっかけになり、「カオスレギオン」につながりました。
「鬼武者2」のセッションでは岩代太郎氏と和楽器の大量サンプリングを行いました。いまだにそのライブラリーは必要なレコーディングで使われています。
SEMO:
ゲーム音楽家として名前が広まった作品は「カオス レギオン」でしたが、あのダークなフュージョンサウンドはどう創り上げたんでしょうか。
深澤秀行:
「カオス レギオン」では1曲のテーマ曲から全てが始まったんだ。
CD#15 “FELL NO FEAR” がイメージの源で、そこから膨らんで行った。
最終的には“FELL NO FEAR”を凌ぐ曲が沢山生まれたけど、僕の中では
カオスレギオンの事を考えるといつもあの曲が流れるんだ。
このダークな世界観はとても自然なことでした。Ozzy Osbourneを聴いていたからかな?Diary Of A Madmanのコーラス〜エンディング部分を聴いたことあるかい?あのサウンドはとてつもない影響を12歳の僕に与えたんだよ!
あとこの作品から初めてカプコン(現Forcewick社)のサウンドプロデューサー遠藤氏と仕事をしたんだ。彼の導きやアイデアは常に的を得ているので大きな信頼を寄せています。
SEMO:
その後、深澤さんは「新鬼武者」の音楽の殆どを担当されました。 どうやってあの様な映画的で壮大な音楽を作り上げたんでしょうか。 音楽の主題的にはどうアプローチしましたか?
深澤秀行:
やはり岩代太郎氏の制作現場やスタイルなどには間違いなく影響を受けているでしょうね。彼の作品の殆どの初演を目の当たりにしている訳だしね。彼以外にも沢山の作曲家の現場を幸運にも体験することが出来た。そういう意味で、「壮大な」サウンドや「映画的な」サウンドを手にいれることは僕には容易いことです。
それよりもやはり音楽自体や、メロディ自体に集中する必要があります。特にアナログシンセを弄りだすと2時間くらい気にもならないわけです。ですのでそういった音色イメージに集中することよりもまさに音楽的主題を見つける事が大事なのです。ですのでとにかく太く濃く強いメロディを心がけました。
SEMO:
「モンスターハンター フロンティア オンライン」は深澤さんの音楽的な多才さをさらに証明した作品です。 どのようにしてモンスターハンターシリーズの「音」をオンラインゲーム用に作り変ていきましたか。
深澤秀行:
いくつかのロビー用の曲や戦闘曲を手掛させていただきました。
特別な世界観なので慣れるまで注意が必要でした。アコースティックなのは当然ですが、それだけじゃない別世界の雰囲気も提供しないと合わない。単純な原始的な音だけでなく、何処か遠い星の太古の物語とでも言うのでしょうか。そういったイメージで楽器の選択や作曲をしています。
どのゲームでも、可能な限りイメージになる画や設定、それが無ければ色や時間だけでも教えてもらいます。
SEMO:
バンダイのゲーム「ドラゴンボールZ Sparking! NEO」と「機動戦士ガンダム戦記」を手掛けられました。 これらのタイトルの仕事経験を聞かせて頂けますか? アニメ作曲家としてのバックグラウンドは手助けになりましたか?
深澤秀行:
「ドラゴンボールZ Sparking! NEO」では数曲の参加でしたが、特別に音楽の制約もなく、楽しく音楽が制作できました。
「機動戦士ガンダム戦記」への参加は僕の音楽制作に大きな転機になりました。
日本でストリングスを録音し、ロンドン・アビーロード・スタジオで管楽器をダビングし、日本へ戻って木管楽器をダビングした後、ロスアンゼルスでミックスダウンを行いました。ミックスダウンを担当してくれたのがAlan Meyersonという憧れのエンジニアでした。Hans ZimmerをはじめとするRemote Control作品だけでなく沢山のハリウッド映画のスコアをミックスしている人です。その仕事を間近で体験出来たことは今でも強烈に身にしみています。
SEMO:
ここ最近では「ストリートファイターIV」と「スーパーストリートファイターIV」の作編曲家として深澤さんの認知度がさらに高まりました。 どういった経緯でこれらの作品に関わることになったのでしょうか、そしてこういった人気の高いシリーズの音楽を受け継ぐのはどうでしたか?
深澤秀行:
大変な幸運で抜擢されました。有頂天になっていたのはほんの短い間だけで、直ぐに目を覚まさせられました。過去の膨大な名曲たちの編曲は勿論、新しく生まれるキャラクターやステージの楽曲制作のプレッシャーは大変大きいものでした。
SEMO:
ストIVではステージ曲は「ステージを基にしたテーマ」「新しいキャラクターを基にしたテーマ」「古いキャラクターのテーマをを基にアレンジされたテーマ」と3つのカテゴリーに分かれています。 それぞれのカテゴリーに対してはどうアプローチしていったのですか? そしてカテゴリーごとに、どういった事に焦点を当てて作曲されたんでしょうか。
深澤秀行:
「ステージを基にしたテーマ」に関しては全て新曲だったと思います。
場所や時間帯などの設定と、多少のグラフィック素材だけでイメージを膨らますのは大変だったけれども、アニメーション劇伴では画のコンテすらない台本で作曲を進めることもありますし、文句はありません。やはりこの場合は国・場所の情報からリズムのイメージを作り、そこにその国・場所の楽器などでメロディを奏でることを基本的な目標でした。必ずしもそうはなっていませんが。
「古いキャラクターのテーマ」は本当にプレッシャーを感じましたね。リュウやケンや春麗などのアレンジをするのは大きな喜びでしたが、果たしてファンに受け入れてもらえるのかは大きな問題でしたが、製作中は考えないようにしました。幸運にもほとんど全てのキャラクターのメロディは完全に確立している強いメロディでしたので、技法的に困難な事はありませんでした。
しかしモチーフ的に短いキャラクターは苦労しました。
「新しいキャラクターを基にしたテーマ」は、個人的には大変に興奮するものでした。キャラクターの世界観に現実味を帯させる作業と言ってもいいんじゃないか、と思います。音楽が作られて初めてそのキャラクターの存在感が現実味を帯びる、そんな印象です。
SEMO:
特に気に入っているステージ曲があれば教えていただけますか? 上記のカテゴリーの中ではどれが一番気に入っていますか? もしあるならその理由も聞かせて下さい。
深澤秀行:
やはり作曲家としては 「新しいキャラクターを基にしたテーマ」というカテゴリーが印象深いですが、「古いキャラクターのテーマ」編曲は本当に興奮したし、楽しめました。
ファンから声をかけられるのは何故かTOKYO OVERPASSステージの曲についてなんです。そういえばアレは初音ミクだ!という指摘がありましたが、実際は僕が歌ってます。そうは聞こえないかもしれないけど。もちろんたくさんのエフェクターで処理をしているけどね。僕が一番好きなのはSOLAR ECLIPSE STAGEです。
SEMO:
「スーパーストIV」では多くの新しいステージ曲を提供されました。 「ストIV」と比べて、楽曲制作に対してはどうアプローチをされましたか? 音楽的に何か新しい事はされたんでしょうか。
深澤秀行:
特別にアプローチを変えることはありませんでしたが、あえて言えば、より分かりやすくシンプルに表現することを心がけました。
「スーパーストIV」が発売され、ファンは深澤さんの次のプロジェクトを楽しみにしています。 将来的にはもっとアニメや有名なゲームシリーズの仕事をしたいと思っていますか? 最後に世界中のファンに何かメッセージがあればお願いします。
深澤秀行:
幸運なことに現在も複数の新しいゲームを手がけています。今後は静かなゲーム!も作ってみたいです。あと小さなインディー・ゲームもやってみたい。実はGeometry Warsのファンなのです。シンプルだけどとても美しいし、僕にとってはテトリスのように永遠にトライし続けてしまう中毒性を感じます。とにかく、どんなゲームのどんな音楽でも手がけてみたいです。
ストリートファイターIV発売以降、沢山のメッセージを頂いてます。ゲームのファンは本当に世界中にいて、それぞれ熱い思いがあるのを痛感しています。これからも皆に楽しんでもらえるような作品を作りたい思います。どうもありがとう。
Written by Chris Greening
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